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最高裁判所第二小法廷 昭和24年(れ)297号 判決

主文

原判決を破毀する。

本件を東京高等裁判所に差戻す。

理由

辯護人田沼秀男の上告趣意について。

原審の確定した事実によると被告人は長男富雄と共謀の上昭和二二年一二月一四日午後十時頃から翌一五日午前零時頃までの間三回にわたって栃木縣鹽谷郡喜連川村大字鷲宿字堀内所在喜連川農業會鷲宿(第四號)倉庫で同農業會倉庫係坂本勝弥保管の水粳玄米四斗入三俵づつ合計九俵を窃取したものであるというのであって原審は右事実を併合罪として處斷しているのである、ところが右三回における窃盗行爲は僅か二時間餘の短時間のうちに同一場所で爲されたもので同一機會を利用したものであることは擧示の證據からも窺われるのであり、且ついずれも米俵の窃取という全く同種の動作であるから單一の犯意の発現たる一連の動作であると認めるのが相當であって原判決擧示の證據によるもそれが別個獨立の犯意に出でたものであると認むべき別段の事由を発見することはできないのである。然らば右のような事実關係においてはこれを一罪と認定するのが相當であって獨立した三個の犯罪と認定すべきではない。それ故原審が證據上別段の事由の認められないに拘わらず右三回の窃取行爲を獨立した三個の犯罪行爲と認定したことは実驗則に反して事実を認定した違法であると云わなければならない、この點に關する論旨は理由があり原判決は破毀を免れない。

よって爾餘の論旨に對する説明を省略し刑訴施行法第二條舊刑訴第四四七條、第四四八條ノ二により主文の通り判決する。

この判決は裁判官全員一致の意見である。

(裁判長裁判官 霜山精一 裁判官 栗山 茂 裁判官 小谷勝重 裁判官 藤田八郎)

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